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映画『水曜日が消えた』の考察・感想・作品解説【ネタバレ注意】

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2020年6月19日に公開された映画『水曜日が消えた』。7つの人格が入れ替わる主人公を演じた中村倫也さんの演技力が話題に。

本作は、幼い頃の交通事故がきっかけで、曜日ごとに人格が入れ替わるようになった青年が主人公。ある日突然、7つの人格の一人である〈水曜日〉が消えたことで、彼の日常が崩れていくというお話です。

『水曜日が消えた』という作品は、近年の映像作品で多い、台詞で説明しすぎる作品とは異なり、あえて説明しすぎないようにし、映像(映像的説明)から汲み取ってもらうような能動的に楽しむ映画となっています。

そのため、人によっては「あれってどういう意味だったの?」と疑問が残る方もいるでしょう。

この記事では、映画『水曜日が消えた』の誕生秘話をはじめ、みなさんが疑問に思うことを考察したり、ネタバレありの感想を語ります。

あくまで個人の解釈ですので、これが正解というわけではありません。この記事をきっかけ本作の考察を楽しんでもらえれば嬉しいです。

こんな方はぜひ参考に!
  • 『水曜日が消えた』を観たけど疑問が多く残り、そのモヤモヤを解消したい。
  • 『水曜日が消えた』を鑑賞した人はどんな考察をしているのか知りたい。
  • 『水曜日が消えた』のネタバレありの感想を知りたい
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映画『水曜日が消えた』の作品紹介

映画『水曜日が消えた』イメージポスター
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

映画『水曜日が消えた』は、幼い頃の交通事故をきっかけに、7つの人格が曜日ごとに入れ替わるようになった主人公の人間ドラマを描いた作品です。

ヒューマン・ドラマでありながら、ハラハラドキドキのサスペンス要素を含み、さらにはさまざまな謎が隠されたミステリ要素もあります。

まずは、そんないろんな要素が複雑に絡み合った本作の作品概要を見ていきましょう。

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映画『水曜日が消えた』の誕生秘話

打ち合わせを重ねていくなかで、本作の監督である吉野監督から送られてきた3行のプロットから物語は動き出したそうです。

タイトル『水曜日が消えた』
1人の人間の内側で、曜日ごとに入れ替わって暮らしている7つの人格。
そのうちの最も地味でつまらない、通称“火曜日”の視点を通して描かれていく世界の物語。しかし、ある日“水曜日”が消えることから物語が動き出します。

出典元:「CINEMORE」(https://cinemore.jp/jp/erudition/1488/article_1489_p1.html)、『水曜日が消えた』中村倫也×新鋭監督が醸造した、「優しい新感覚」

『水曜日が消えた』という物語は、こちらの3行のプロットから生まれました。

ほかの作品では意図しないタイミングで人格が入れ替わったりしますが、この作品では曜日ごとに人格が入れ替わります。

きっちり曜日ごとに入れ替わる、というのはあるようでなかった斬新な設定だと個人的には思います。

脚本づくりでは話し合いを重ね、サスペンスやコメディ、感動に恋愛などの設定を活かしながらいろいろなプロットを作成したそうです。

その過程で生まれたいくつかの物語の中から、いろんな要素を取捨選択して組み合わせたりをしながら、クランクイン直前まで改稿を重ねて物語を作っていったというこだわり。

また本作は、映画ならではの面白さを追求した作品たちからのインスピレーションを受けているようです。

たとえば『ゲット・アウト』や『トゥルーマン・ショー』に『her/世界でひとつの彼女』。それから『アバウト・タイム 愛おしい時間について』や『ビューティー・インサイド』、『ドント・ブリーズ』など、現実の中にフィクショナルな要素を詰め込んだ作品。

ほかにも『ハッピー・デス・デイ』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のような”タイムリープもの”のエッセンスを足しているのも非常に興味深いです。

このように本作の物語にはいろんなアイデアが詰まっており、何度観ても新しい発見があります。

映画『水曜日が消えた』のあらすじをネタバレ解説

映画『水曜日が消えた』の特徴は、主観で構成されている点です。

7つの人格をフラットな視点で描くのではなく、“火曜日”の視点で物語が進んでいきます。

水曜日が消えた

映画『水曜日が消えた』主人公が眠っているシーン
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

主人公は小学生の頃に遭った交通事故が原因で、7つの人格が曜日ごとに入れ替わるようになった青年(斎藤数馬)。人格が分かれる前の記憶はあいまいで、なぜこうなったかという原因を思い出せないまま過ごしていました。

それぞれの曜日ごとに現れる7人の“僕たち”は、お互いを曜日で呼び合い、行動日誌とメッセージを書いた付せんでコミュニケーションをとっています。

家の中のスペースは7つに区切られ、衣類や食器もそれぞれ別のものを使っています。

中でも“火曜日の僕”は、7人の中で最も地味で退屈な存在。ほかの曜日から、家の掃除を押し付けられ、冷蔵庫の中身も管理するなど損な役回りばかり。

さらに読書が趣味の火曜日は、図書館が休館日で人生を楽しめていない様子。しかし、そんな単調な日々に変化が訪れます。

いつも通り眠りについた火曜日。いつも通り火曜日の朝を迎えるはずが、目覚めたとき、そこはいつもの火曜日と違っていました。

いつもと違う情報番組のコーナー、緑道にかかる音楽も聞き慣れない。

そう、水曜日が消えたのです。

恋する火曜日

火曜日の僕と図書館司書の瑞野
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

大変なことが起きていると、火曜日は慌てて病院に電話しようとしますが、ふとあることが頭に浮かび思いとどまります。ずっと休館日で行けなかった図書館に行けることを思い出したのです。

自分の知らない曜日を体験してみたいという好奇心に駆られた火曜日は、連絡をやめてしまいます。

火曜日にとって水曜日は、決して行くことのできなかった、いわば新しい世界。つまらない日常が変わるのではないかと胸踊らせます。異常事態が起きているにもかかわらず……。

さっそく、火曜日は図書館に向かいます。そしてそこで出会った図書館司書の瑞野に、恋に落ちるのです。彼女が”水曜日”に想いを寄せているともつゆ知らずに。

そんな火曜日の僕は、自分が水曜日になりすましていることに罪悪感を抱きながらも、瑞野に惹かれていきます。

初めて水曜日を経験した火曜日は帰りに赤いバラを買って帰路につくのですが、その道中で一瞬、意識が飛んで倒れてしまいます。

何が起きたのかよくわからず、あまり気にも止めずその日は眠りにつくのでした。

崩れていく僕たち

驚く火曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

翌週の水曜日、目覚めたのは火曜日でした。また図書館に行けることに喜び、本を借りに行きます。その帰りに一ノ瀬に会い、水曜日ではなく、火曜日であることを見破られてしまいます。

さらに、火曜日が瑞野に想いを寄せていることも見抜くのです。

一ノ瀬は瑞野をデートに誘うよう背中を押された火曜日は、瑞野をデートに誘います。すると見事OKをもらい、翌週の水曜日にレイトショーを観に行くことに。

デート当日、瑞野と映画を観た火曜日は、彼女から”水曜日”への想いを告げられます。

しかし、意識が途切れ途切れになり、彼女の話の肝心な部分が聞き取れません。自分に何が起こっているかもわからず、パニックになった火曜日はその場から逃げ出してしまいました。

翌週の火曜日。いつも通り検診に行くのですが、病院の様子がおかしいことに気づきます。安藤先生が”僕ら”の測定データを改ざんしていたことがわかり、調査が入ったのです。

そしてついには、木曜日も消えてしまうという事態に。その木曜日の夜、瑞野に急にデートから逃げ出したことを謝り、水曜日を彼女のもとへ帰すことを決意します。

病院に報告するため電話を掛けようとしますが、繰り返し繰り返し時間が飛びということが起き……。

ある時点で、スマホで動画が撮られていることに火曜日が気づきます。それを再生するとそこに写っていたのは”月曜日の僕”だったのです。

何が起きているのか状況がつかめず怖くなる火曜日。最終的にはそれぞれの人格を取り戻したい火曜日と、すべての人格を手に入れようとする月曜日が対立し……。

生き残った月曜日

笑顔で起床する主人公の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

最終的に生き残ったのは、月曜日でした。火曜日も消えてしまったのです。

事故のときのことをすべて思い出し、一ノ瀬の話を聞いたことで月曜日の心境に変化が。

月曜日は新木先生に手術で7つの人格を戻すよう懇願します。

治療の結果、彼らは”元の7人”に戻ることができたのです。

主人公の7つの人格を解説

『水曜日が消えた』7人の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

つかみどころのないどこか飄々とした雰囲気を持ち、活躍の場を広げ続ける中村倫也さん。彼が演じるのは、曜日ごとに人格が入れ替わる青年(斎藤数馬)です。

両極端な”月曜日”と”火曜日”をはじめ、スポーティな服装を好む“水曜日”、絵を仕事にしているイラストレーターの“木曜日”、植物を愛する物静かな“金曜日”、ゲーム作りをしている“土曜日”、アウトドア好きで釣りが趣味の自由人“日曜日”と、それぞれで異なる魅力を放っています。

そんな彼らについて詳しく見ていきましょう。

月曜日

『水曜日が消えた』月曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

お酒・煙草・音楽が好きで、自分の一日を全力で楽しむことだけを考えている問題児のミュージシャン。

自分のやりたいことに正直な行動派の月曜日は、ほかの曜日のことは考えずに行動しています。そのため、火曜日やほかの曜日たちにトラブルを残してばかり。

あまり良い関係とは言えず、ほかの曜日とは険悪な関係みたいです。

”僕ら”が過ごせるのは一週間に一日だけ。月曜日はギターの練習をしていますが、週一回しかできないので、指先が固くならずに水膨れを潰していつも左手の指に絆創膏を貼っています。

なので、火曜日が起きたらいつも左手には絆創膏が。

火曜日

『水曜日が消えた』火曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

物語の中心となる火曜日。好きなものは、フレンチトーストと外国の観光地の写真集。個性的な7人の中ではごく普通の平凡な人格です。

自分を療養中だという考えで、必要がなければ家から出たがりません。

真面目で几帳面な性格のため、前日の月曜日が起こしたトラブルに悩まされることもしばしば。

月曜日が散らかし放題にした家を火曜日が片づけるのはもちろん、見知らぬ女性と夜を共にし、翌朝、火曜日が目を覚ましたときに驚くなんてことも日常茶飯事です。

水曜日

『水曜日が消えた』水曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

明るく穏やかなスポーツマンの水曜日。いつもシャカシャカのスポーツウェアを着ているのが特徴。ジョギングやスポーツをしたり、野菜ジュースを飲むなどして健康な生活をしています。

ほかの曜日との関係は良好のようで、自分の素性をうまく隠してスポーツインストラクターやリハビリのサポートをしているとか。

また、他人との接し方や距離感に人一倍注意を払いながら、さまざまなスポーツサークルに顔を出しているでそうです。

木曜日

『水曜日が消えた』木曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

職人気質なイラストレーターの木曜日。丸眼鏡と絵具で汚れた手が特徴です。

そんな彼はSNSでイラストを投稿していたら、それが出版社の目に留まり、雑誌などでイラストを描いています。

編集者をごまかしたり口が悪かったりしますが、仕事は真面目にやっているようです。週に一日しか描けないので、いつも締め切りぎりぎりになってしまいます。

金曜日

『水曜日が消えた』金曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

物静かで動じない、孤独を愛する園芸家の金曜日。植物栽培が好きで庭の菜園だけでなく、自分の部屋でも観葉植物を育てています。

人間に対してあまり関心がありません。白や緑色が好きで、味の付いた飲み物が苦手で水を好むそうです。

土曜日

『水曜日が消えた』土曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

おしゃべり好きな社交的オタクの土曜日。金曜日の寝相のせいでくせ毛なのが特徴です。ほかの曜日たちに対戦をしかけたりと社交的。

限られた一日を有効活用するため、外出せずにネットを好む性質があります。将棋やチェス、パズルや海外のボードゲームに凝っていて、オンラインゲームでは知る人ぞ知る存在みたいです。

日曜日

『水曜日が消えた』日曜日の僕
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

人里離れた静かな場所に行きたがる自由人な日曜日。いつも帽子とサングラスを身に着けているのが特徴です。

釣りと魚拓が好きな日曜日ですが、一日しか活動できないため行動半径は限られ、日帰りできるところにしか行けないのが悩み。

極端に無口でほかの曜日との交流がほぼないため、謎に包まれている存在みたいです。ちなみに免許を取ったのは日曜日だとか。

映画『水曜日が消えた』のネタバレ考察と個人的解釈

映画『水曜日が消えた』考察

月に3冊ほどの小説を読み、週に1本は映画を鑑賞している物語愛好家・つじひろが、個人的解釈に基づき『水曜日が消えた』を考察します。

あくまで個人の解釈であり、これが正解ではありません。あなたが考察する際の取っ掛かりとして、参考程度に読んでいただければ。

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なぜ7つの人格が生まれたのか

本作の主人公は幼い頃の交通事故をきっかけに、7人の人格が曜日ごとに入れ替わるようになりました。ではなぜ、7つの人格が生まれたのでしょうか。

おそらく、主人公が引っ越しをするとき、同級生だった一ノ瀬からもらった子豚の防犯ブザーを”僕”が不意に鳴らしてしまったことが事故の原因となり、自分のせいで両親をなくしてしまったことによる強いストレスが多重人格を引き起こしたきっかけになったと推察します。

事故の回想シーンからそんなことを読み取りました。

しかし、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の多くの症例では、交通事故でなることはそうそうないみたいです。

多くの場合、繰り返し心的外傷(トラウマなど)や強いストレスを受け続けることで、次第に解離性障害に発展していくと考えられているとのこと。

なので、事故で頭を強く打ったことによるものと考えることもできますが、本質的には主人公の”僕”が、防犯ブザーを誤って鳴らしてしまったことで事故が起き、その結果、両親をなくしてしまったというショックが強いストレスとなり、彼の中に7人の人格が生まれたのではないでしょうか。

幼少時に大切な人をなくすこと(親との死別など)や重い病気など、圧倒的なストレスがかかる出来事を経験していた人も多重人格になることはあるそうです。

人格の発達過程である小児期にそういった強いストレスがかかることで、人格形成に不具合が起こってしまうことで解離する。

つまり、大切な人を失った圧倒的なストレスによって、7つの人格が曜日ごとに入れ替わるようになったと考えられます。

当時の記憶があいまいで、最初は一ノ瀬が同級だったこともおぼえていません。解離性同一症の症状として過去の記憶の健忘があるそうです。

あの事故は主人公にとって強いストレスとなっており、自分を守ろうとする防衛反応によってその部分の記憶がないのかもしれません。

ちなみに、映画のほうではとくに病名は説明されていませんでしたが、ノベライズのほうでは「周期性人格障害」という病名で説明されています。でもこの病気は実際にはありません。

”曜日ごと”というような周期的に人格が入れ替わるという症例はないため、造語として「周期性人格障害」をつくったのでしょう。

「周期性人格障害」とはおそらく、解離性同一性の一種で、周期的に人格が入れ替わるという人格障害、という設定にしたのではないでしょうか。

映画だけでなく、ノベライズを読むことでより『水曜日が消えた』という物語を楽しめそうですね。

サイドミラーに映る鳥が表すものとは?

ひび割れたドアミラーに映る鳥が示すのは、”僕”の中にいる人格の数を表していると考えられます。

最初は1羽の鳥が7羽に分かれていきます。これは、1つの人格が7つに分割されていったことを表現しているのではないでしょうか。

つまり、曜日ごとに人格は異なっているけど、どの人格も”僕”の一部であるということを示しているのではないかと思うのです。

元の1から7つに分かれていった。そのどれもが元の1である”僕”の一部。

だから、絵の具セットやスケッチブック、リコーダーにじょうろ、それからテニスのラケット、釣り竿、植木鉢といった荷物から、7人が元の”僕”にあった要素がそれぞれ独立した人格として成長していったことを感じ取ることができます。

物語が始まって一周目の火曜日が終わり、回想シーンに。1羽から5羽になります。おそらくこの時点で水曜日と日曜日が消えているのでしょう。

二週目の水曜日の朝に目覚めたのは火曜日で、火曜日が月曜日と対峙するシーンで月曜日の僕は「こっちは日、土、金と繋がっていった」と言っていたことから、そのように推察しました。

その後、回想シーンが描かれるごとに鳥の数が減っていきます。土曜日が消え、そして木曜日と金曜日が消えて。残ったのは月曜日と火曜日。鳥の数は2羽に。

そして最後には鳥は1羽もいなくなってしまいます。

鳥の数がゼロになりますが、それは7人で僕だということを表しながら、その一人ひとりが斎藤数馬だということを表現しているのではないかと考えます。

火曜日が、人格が分かれる前の自分に近い人格で、でもほかの曜日の人格も”僕”で、結局誰が最後に残ろうと斎藤数馬は斎藤数馬なのですから。

ゼロということは、そこからまた新たな人生が始まることを表しているとも考えられるかもしれません。

なぜ安藤先生はデータを改ざんしたのか

担当医である安藤先生がなぜデータを改ざんしたのか。

それはきっと、7つの人格をそのまま維持させたかったからではないでしょうか。

治療を進めるということは、”元の”1つの人格に戻すということ。それはすなわち、どれかの人格を失うということで、趣味や特技、記憶、性格がひとまとまりになるということではありません。

”彼ら”を見てきた安藤先生はどの人格も消えてはいけない存在だと考え始めただと思います。

それでやってはいけないとわかっていながらも、数値やデータを改ざんしてしまったのでしょう。

安藤先生は、事故の前の”元の”人格に戻ることに対して、それは本当に”彼ら”が求めていることなのか、もしかすると7人のままのほうがいいんじゃないかという葛藤がずっとあったのかもしれません。

物語の初めの検診で、安藤先生はぼーっとしていました。

このとき、「彼らにとって治療することは最良の選択なのだろうか」「データを改ざんしてまで”彼ら”を守ることは正しいのだろうか」と、そんなこと考えていたのではないでしょうか。

検査のあと、安藤先生は火曜日の僕に「一人になりたかった?」と問いかけていることからも、おそらくそうなのではないかと思います。

また、安藤先生は新木先生との会話で主人公のことを「彼ら」と呼んでいます。それはそれぞれの人格を一人の人間だと認識しているからでしょう。

一人ひとりの人格が存在し、どの人格も消えてはならない存在──。

だからデータを改ざんし、7人の人格がそのままでいられるようにしていた。しかし病気が思わぬ方向へと進行してしまい、人格が消えていくという事態に……。

分割された人格が失うことは”元に戻る”ということではないはず。そもそも”元”なんてなくて、そこには戻れないのではないでしょうか。

なぜ月曜日は7つの人格に戻ることを選んだのか

7つの人格がどんどん消えていき、最後に残ったのは”月曜日の僕”でした。

みんないなくなってしまい一人になった月曜日は、一ノ瀬の話を聞いたことで、心境に変化があったと思われます。

月曜日は一ノ瀬の存在を通して知るのです。自分以外の人格たちにも大切な人がいて、また愛されていることを。

そのことに気付かされた月曜日は、治療の同意書に7人分の署名を書きます。一人分しかない署名欄に書かれた7人分の署名は、どれも違う筆記用具で書かれていて筆跡も違います。

月曜日がそれぞれの曜日のことを考えながらその曜日を過ごし、そしてその曜日の気持ちになって署名した。

署名欄に記された7人の署名を見ると、そんなことを感じずにはいられません。

火曜日に訪れた一ノ瀬とは”火曜日のふり”をして会っていました。ほかの曜日もそうやってその曜日になって一日一日を過ごしていたのではないでしょうか。

きっとその行動は各曜日の気持ちを知るためにやったことだと思います。

そして月曜日は気づいたのです。消えていい人格なんてないんだ、と。

月曜日だって元は”僕”の一部。火曜も、水曜も、木曜も、金曜も、土曜も、日曜も、みんなで”僕”なんです。一人だって欠けちゃだめなんですよ。

おそらく一ノ瀬に会った火曜日から署名を書き始め、最後は自身の月曜日に署名をして新木先生のもとに同意書を持っていったと推測しました。

そして、どうにか7つの人格が戻るように治療してほしいと、新木先生に懇願するのです。

”元”って、たぶん、7人が存在するところなんでしょうね。

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映画『水曜日が消えた』の感想をネタバレで語る

映画『水曜日が消えた』ネタバレ感想

映画『水曜日が消えた』を観た感想をありのまま、ネタバレだだ漏れで語ります。

人にはいろんな側面がある

7つの人格が存在する主人公の僕は”普通”ではないかもしれません。しかし、彼らのように異なる人格という極端なことでなくても、私たちの中にもいろんな”自分の顔”を持っているはずです。

たとえば、真面目な自分や時に悪ふざけをする自分とか。ほかにも、社交的な一面や殻に閉じこもる自分といった顔だってあるでしょう。

家でごろごろしている自分と仕事をしているときの自分では見せる顔はきっと違うはず。

かくれ繊細さん(HSS型HSP)の筆者の場合、刺激に弱く傷つきやすい面を持ちながら、好奇心旺盛で刺激を求めて行動してしまうという、まるで”月曜日”と”火曜日”のような正反対な側面があります。

本作を観て、そんな自分も悪くないのかなと思うようになりました。エンドロールでの付箋の会話のように、自分と向き合ったことでそういう矛盾した自分も受け入れられるように。

自分はもちろん相手のことを認めて、受け入れることって大事なんでしょうね。

幸せって何なのでしょう?

曜日ごとに入れ替わる7つの人格──もし、同じ状況になったら……。大変だし、不便でしょうね。

彼らにとってそれは当たり前のことで、平穏に暮らしていたのですから。決して不幸というわけではないのでしょう。

きっと多くの人は〈不便=不幸〉と繋げてしまいがちだと思います。私もその一人でした。

でも本作を鑑賞してから、「大変だから」「不便だから」といって必ずしも不幸というわけではないことに気づかされました。

幸せのカタチなんて人それぞれ違っていて、自分の幸せやこういうことが幸せだよねという常識が幸せとは限らないんです。

初めて本作を観たとき、主人公は事故の前の一人の人格に戻るというハッピーエンドが待っていると思いました。

それが彼にとって幸せな結末だと思ったからです。でも物語が進むにつれて、そうではないことに気づきます。

『水曜日が消えた』では「幸福とは何なのか」という視点がカギとなっているかもしれませんね。

彼らにとっての幸せを考えることで、自分にとっての幸せを考えるきっかけになるでしょう。

一ノ瀬の言葉に込められた想い

幸せになれよ──火曜日に向かって放つ一ノ瀬の言葉。切実な願いが込められている気がしてなりません。心の底からそう願っていると私は感じました。

”僕”の同級生だった一ノ瀬は、引っ越していく彼にあげた子豚の防犯ブザーが原因で事故が起きてしまったことを、一ノ瀬は事故について調べてどこかで知ったのでしょう。

それゆえ、彼に対して罪悪感を持っていたのだと思います。

だからこそ、7つの人格を持つ彼の中に元の彼を探したし、友達になりたいと思ったのでしょう。7つの人格を生み出す原因となった自分が傍にいて、彼に寄り添いたいとも思ったに違いありません。

そして彼には幸せになってほしいという気持ちも強かったのだと思います。

自分のせいでこうなってしまったというシコリが、じんじんとした痛みを伴ないながらずっと残っていた。

一ノ瀬の視点で本作を観るとそんな気持ちを汲み取れて、ものすごく胸を締め付けられます。

だから一ノ瀬の一つひとつ言葉には、ものすごい重みが。

一ノ瀬に注目して本作を視聴するとまた違った見え方になるので、再鑑賞する際は参考にしてみてください。

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映画『水曜日が消えた』ネタバレ考察&感想まとめ

各曜日のコップ
出典元:2020「水曜日が消えた」製作委員会

映画『水曜日が消えた』は鑑賞を重ねるごとに新しい発見があり、何度観ても楽しめる作品です。

一度観ただけではわからなかったことも、回を重ねていくことで見えてくることもあるでしょう。

本作は、最近の映像作品に多い台詞で説明しすぎる作品とは異なり、あえて映像での表現にとどめておくことで作品に余白を作っています。

余白があることで観客自身が能動的に観る必要があり、考える余地が生まれ、鑑賞後も「あれはどういうことだったのだろう?」と考えていく面白さが生まれるのです。

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ナギサ
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