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奇妙な“町”を描いた映画『人数の町』の感想とその魅力に迫る

人数の町のサムネイル画像

多数決に違和感を覚えた経験ってありませんか?
あなたにとって幸せってなんですか?
自由とはいったい何なんでしょうか?

本作は人が”数”になったときに異常に力をもつ多数決の怖さや自ら考えて行動することの意義など複数のテーマが絡み合った作品です。

当たり前のことに対して問題提起すると同時に、さまざまなことについて考えさせられる、とても興味深い映画だと感じました。不穏な雰囲気が漂うけど、どこか好奇心をくすぐられる、そんな映画です。

この記事では、2020年9月4日に公開された本作のあらすじや感想、見どころなど、映画『人数の町』の魅力を余すところなくお届けします。

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『人数の町』の作品概要

ディストピア・ミステリー映画『人数の町』映画『人数の町』は、新たな才能を発掘するために立ち上げられた「第一回木下グループ新人監督賞」において、応募総数241作品の中から準グランプリに選ばれた作品(ちなみにグランプリは、吉沢亮主演で映画化された『AWAKE』)。

衣食住が保証され、セックスで快楽を貪ることもでき、出入りも自由だが決して離れることはできない”謎の町”が舞台となっています。借金で首が回らなくなった蒼山(中村倫也)が、その”町”の住人となり、そこで出会う人たちとの交流を経て、”町”の謎に迫っていくディストピア・ミステリー。

その独特の世界観に、きっとあなたも気づかぬ間に引き込まれているはずです。

50歳で初長編映画デビュー監督・荒木伸二

脚本・監督を務めたのは、CMプランナー・クリエイティブディレクターとして数々のCMやMVを手掛けてきた荒木伸二さんです。『人数の町』は荒木監督が、第一回木下グループ新人監督賞の準グランプリを受賞したオリジナルストーリーで、彼にとって初の長編映画デビューとなります。

「別に映画監督になりたかったわけじゃない。映画を撮りたかっただけ」と、あるインタビューで語っていた荒木監督。四十代になってからシナリオスクールに通い、脚本のコンクールに応募し続け、テレビ朝日21世紀シナリオ大賞優秀賞、シナリオS1グランプリ奨励賞、伊参映画祭シナリオ大賞スタッフ賞、MBSラジオドラマ大賞優秀賞など、数々の賞を受賞しています。

そして、第一回木下グループ新人監督賞の準グランプリを受賞して、初監督作品を撮るチャンスをつかみ取り映像化されたのが本作。

影で支えるキーパーソン撮影監督・四宮秀俊

映画には制作を統括する映画監督の他にも、野球で言うところのヘッドコーチや打撃コーチといった、特定の部門を任されている「撮影監督」が存在します。

『人数の町』で撮影監督を務めたのは、『きみの鳥はうたえる』や『ミスミソウ』、『さよならくちびる』などの作品を担当してきた四宮秀俊さん。『きみの鳥はうたえる』では第73回毎日映画コンクール撮影賞を、『さよならくちびる』では第41回ヨコハマ映画祭撮影賞を受賞している卓越した才能の持ち主。本作では第42回ヨコハマ映画祭撮影賞を受賞しています。

そんな四宮秀俊さんが担当した『ミスミソウ』を観たことがあるんですが、もう映像からその場の空気感とかがこれでもかってくらいひしひしと伝わってくるんです。『ミスミソウ』は残酷で残虐な作品なんですが、どこか透き通った映像で、おもわず見入ってしまいました。

本作でも吸引力のある映像は健在で、観る人をぐっと引き込みます。四宮さんが手掛けた作品は、物語の世界に漂う空気感を伝えるのが秀逸です。映画に限らず、YouTubeの動画でも、映像がイマイチだと見る気が失せませんか?

映像は見る人の気持ちを動かす重要な要素です。映像美に長けた作品は見る人の心を動かします。これを機に、撮影監督に注目するのも、映画を楽しむうえでいいポイントかもしれません。

そもそも撮影監督とは──。映画監督の仕事は俳優の演技からセリフまわしの流れ、衣装の色、ヘアメイクの雰囲気、カメラアングル、美術のデザイン、編集に至るまで、決めなきゃいけないことや考えることが山のようにあります。

そんな膨大な作業の中でもとくに映画監督が大事にしないといけないのは、目の前のシーンの演出。つまり、演技の流れや感情の流れといったことを一番に考えて俳優さんたちのいい演技を引き出すこと。

それが映画監督の最も大事な仕事なんです。そうなったとき、カメラのことや映像がどうなるか、ということまで手が回りません。「カメラを少し右にずらして」とか、「もう少し明るい照明で」といった細々したところまで考える余裕がないので、映像にまつわることすべてのことは専門のプロに担ってもらう──それが「撮影監督」なんです。

もちろん全体の采配は映画監督が決めますが、映像に関しては撮影監督に任せています。なので、スクリーンに映し出される映像はすべて、撮影監督が取り仕切っているのです。

個性派俳優陣が集結!主演とその脇を固めるキャスト

借金で首の回らなくなった主人公・蒼山哲也を演じるのは、映画『屍人荘の殺人』や連続テレビ小説『半分、青い。』での好演のほか、『水曜日が消えた』で一人七役を演じるなど、その幅広く卓越した演技力に注目が集まる中村倫也さん。本作でも見事な演技を見せてくれます。

そして主演の脇を固めるのは、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』で主演を務め、本作で木村紅子を演じた石橋静河さんをはじめ、連続ドラマW 東野圭吾『ダイイング・アイ』にて女優デビューし、本作が映画初出演となるモデルの立花恵理さん。

それから、数々の映画やドラマに出演してきた、本作のキーパーソンとなる謎の男・ポールを演じた山中聡さん。などなど個性派俳優陣が勢揃いしている『人数の町』は見ものです。

『人数の町』のあらすじ

もしかしたら、日本のどこかに本当に存在するかもしれない、ある”町”。そこは果たして、理想郷か、それとも……。

借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山哲也(中村倫也)は、黄色いツナギを着た謎の男(山中聡)に助けられる。ポールと名乗るその男は蒼山に”居場所”を用意してやるという。蒼山のことを「デュード」と呼ぶその男に誘われ、言われるがまま辿り着いた先は──ある奇妙な”町”だった。

町の住人はツナギを着た「チューター」たちに管理され、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証される。それどころか町の社交場であるプールで繋がった者同士でセックスの快楽を貪ることも。

ネットへの書き込み、別人になりすました選挙投票、デモへの参加……。住人たちは何も知らされず、何も深く考えずにそれらの労働を受け入れ、奇妙な町での時間は過ぎていく。

ある日、蒼山は行方不明の妹を探しに来たという新しい住人・木村紅子(石橋静河)と出会う。彼女はほかの住人たちとは異なり、思い詰めた様子。蒼山はそんな彼女を気にかけるが……。

町の住人となった蒼山が、住人たちとの交流を通して、出入りも自由だが決して離れることのできない奇妙な町の謎に迫っていく。一体、この町が抱える恐ろしい秘密とは──。

『人数の町』の感想

感想文のアイキャッチ画像主観的すぎて何の参考にもならない感想文。だけど作品に対する熱量だけはある感想文。

物語好きの筆者が感じことをありのまま述べているので、ネタバレ要素も含みます。もし、まっさらな状態で観たいという方は鑑賞後にお読みください。

好奇心くすぐられる独特の世界観

奇妙で、謎めいていて、それがとても魅力的な作品です。その好奇心くすぐられる独特の世界観がすごく好き。ミステリアスな人に惹かれてしまう感覚に近いかもしれません。不気味な空気感に包まれた映像の中で、町の住人たちはわりと楽しそうで……。そのギャップに惹かれてしまうのだと思います。

人間の、知らないことを知りたいという欲求を巧みに引き出し、観客をぐっと引き込む世界観は秀逸です。『人数の町』はいままでにない、独自の世界観を持っており、その感性や魅力をびしびし感じます。

管理されているにもかかわらず、どこか自由に生きている住人たちを見ていると、感覚がズレてきます。鑑賞を進めていくとその違和感が徐々に増していき……。

もとの一般社会に戻りたいとは思わないのだろうかと考えたくなりますが、その町の住人たちは一般社会から逸脱した人たち。そこに居場所はなく、奇妙な町で暮らすしかない。町では簡単な労働さえすれば、何不自由なく生きいける。何かに追われることもなく、怯えることもない。安心して生活できる環境に、何の不満も持たないのは当たり前。

もし、あの町が現実に存在したら──ゾッとするけど興味は惹かれます。ちょっと行ってみたいと思ってしまいますが、興味本位で行くような場所ではありませんね。出入りは自由でも、決して離れることのできない町なのだから。そう考えるとやっぱりとても怖い場所ですね。

人が”数”になる恐怖

人が”数”に変える瞬間、恐怖を覚える。多数決に違和感を抱いたことのある人も少なからずいるのでは。そこに”個”はなく、”人数”として扱われる恐怖。

人数の町では個人としてではなく、数の中のひとつとして扱われる。だからお互い名前では呼ばないし、名前も知りません。

なぜ蒼山は謎の男から「デュード」と呼ばれているのか──「デュード」は英語で相手を呼ぶときに「おまえ」というニュアンスで使われることがあるらしい。つまり、住人たちは”数”として扱われているということ。

住人同士で「フェロー」と呼び合うのも同様。「フェロー」は英語で「仲間」や「同僚」といった意味が。名前がないって、人間として大事なものが奪われた感じがすごいしますね。

実は、蒼山、紅子、緑、灰谷、眞白、モモ、紺野、橙、黒田と”ディード”はみんな色に関する名前を持っている。十人十色という言葉があるが、一人一人にはもともと個性があって自分の色がある。

一般社会では生きづらい人々が”個”を捨て、”人数”として暮らす。それが人数の町。怖いけど、彼ら彼女たちにとっては楽園とも言える居場所なんですよね。複雑な気持ちに……。

謎は謎のままで

本作を初めて鑑賞したとき、「どう解釈すればいいのだろう?」「一体、なんだったんだろう」というモヤモヤした気持ちになりました。個人的には本作のような謎が謎のまま、わからないまま終わる物語が意外と好きです。どう受け取るかは観た観客に委ねる感じが。

学生時代は嫌いだった宿題のようだけど、観た人が持ち帰ってその人自身が物語の続きを想像する。余韻を楽しむ余白があるところが面白いです。

「パーカーとは?」「”美しい景色”とは?」謎は謎のままで、そのわからないを楽しめるかどうか。荒木監督のインタビュー記事なんかを読むと、謎の輪郭が少しはっきりしてくるので、気になった方は調べてみるといいですよ。

『人数の町』を面白くするか、つまらなくするかはあなたの創造力しだい。

映画『人数の町』を無料で観る方法

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U-NEXTにラインナップされている作品には、「見放題作品」と「ポイントレンタル作品」の2種類があります。映画『人数の町』はポイントレンタル作品となり(2021年11月現在)、特典でもらえる600円分のポイントを利用すれば無料で観ることができるのです。

本作主演の中村倫也さんの出演作である、ドラマ『この恋あたためますか』や映画『あさひなぐ』などの作品は見放題作品にあります。それから、石橋静河さんの初主演映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』や『きみの鳥はうたえる』、『いちごの唄』などの作品も見放題作品に含まれているので、本作と合わせて視聴してみてはいかがでしょうか。